オファーの年収は何でできているのか|提示額の内訳を人事が分解する

転職ノウハウ

オファー面談で「年収620万円です」と言われても、その数字だけでは現職と比べられません。提示年収は基本給・固定残業代・賞与・手当という性質の違う4つの合計で、どの比率で積まれているかによって、毎月の手取りも、翌年以降の伸び方も変わります。

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提示額を作る側にいた人事の立場から、内訳がどう組まれているのか、面談で何を聞けば分解できるのかを書きます。金額そのものを上げる交渉の話は別記事にまとめているので、ここでは「提示された数字の読み方」に絞ります。

提示年収は4つの部品でできている

部品 性質 確実に入るか
基本給 毎月固定。賞与・退職金・残業単価の算定基礎になる 入る
固定残業代(みなし残業) 一定時間分をあらかじめ定額で支給 入る(ただし基本給ではない)
賞与 会社業績と個人評価で変動。提示時は「想定」であることが多い 変動する
手当(住宅・家族・役職など) 要件を満たした人だけに支給 条件次第

同じ620万円でも、組み方によってまったく別の条件になります。

A社 B社
基本給(年額) 450万円 330万円
固定残業代 なし 90万円(月45時間分)
賞与 150万円(基本給4か月想定) 180万円
手当 20万円 20万円
提示年収 620万円 620万円

差が出るのは次の年からです。基本給が120万円違うと、昇給率が同じでも上がり幅が違います。退職金の算定基礎も、残業が45時間を超えたときの割増単価も基本給に連動します。B社で残業が月20時間しかなければ、45時間分の固定残業代は満額もらえますが、その代わり基本給が低い状態で在籍年数を重ねることになります。

会社側では、提示額はこう決まっている

採用する側の手順はおおむね決まっています。

  1. 等級(グレード)を決める。面接評価と職務内容から、社内のどの等級に当てはめるかを先に確定させます
  2. 等級ごとの給与レンジの中で位置を決める。レンジには下限と上限があり、その中のどこに置くかを、現職の年収と、社内の同じ等級の社員とのバランスを見て決めます
  3. 賞与を想定値で乗せる。前年度の実績支給月数を掛けた数字が使われます

ここで押さえておきたいのは、動かしやすいのは2の「レンジ内の位置」だけだということです。1の等級は面接の評価で決まっていて、オファーが出た段階で覆すのは現実的ではありません。社内の同格社員の給与体系に手を入れることになるからです。

逆に言えば、レンジ内の位置は数十万円単位で動く余地があります。人事の側では「レンジの中位まで」といった決裁の範囲があらかじめ決まっていることが多く、その範囲内なら調整の手間もかかりません。

自分に提示された金額が、その会社のレンジのどのあたりなのかは、社内の相場を知らないと判断できません。外資系や日系グローバル企業は等級と報酬レンジの紐づけが明示されていることが多く、この点を確認しやすい傾向があります。外資系転職ならエンワールド・ジャパンのようにその領域を専門に扱うエージェントは、レンジの実情を具体的に把握しています(無料転職相談)。

提示額が希望に届かないとき、どこで止まっているのかはエージェントが年収交渉してくれない理由にまとめました。

内訳を見ないと損をする3つのパターン

賞与が「想定」で積まれている

提示年収に含まれる賞与が、業績連動の想定値であるケースです。前年度が4か月なら4か月で計算されますが、支給月数が下がれば年収も下がります。求人票の「モデル年収」も同じ作り方です。過去3年の実績支給月数を聞けば、変動の幅がわかります。

固定残業代が基本給と別建てになっている

固定残業代そのものは違法でも不利でもなく、残業が少ない月でも満額支給されます。注意したいのは、賞与が「基本給の◯か月分」で計算される会社では、固定残業代は賞与の算定基礎に入らない点です。年収の総額が同じでも、基本給の比率が低いほど賞与・退職金は小さくなります。何時間分が含まれているかと、超過分が別途支給されるかは必ず確認しておきたいところです。

手当に要件がついている

住宅手当は賃貸のみで持ち家は対象外、家族手当は配偶者の年収要件あり、といった条件がついていることがあります。提示年収に手当が含まれているのに、入社後に要件を満たさず支給されないと、その分がそのまま目減りします。制度を作る側にいると、この行き違いは実際に起きます。

オファー面談で聞く5つ

いずれも答えにくい質問ではありません。むしろ、聞かれる前提で資料を用意している会社が多いです。

  1. 提示年収の内訳「基本給、賞与、手当の内訳を教えていただけますか」
  2. 賞与の算定方法と実績「賞与は基本給の何か月分という形でしょうか。過去3年の実績支給月数もうかがえますか」
  3. 固定残業代の有無と時間数「固定残業代は含まれていますか。含まれている場合、何時間分でしょうか」
  4. 手当の支給要件「住宅手当の対象になる条件を教えてください」
  5. 初年度の賞与の扱い「入社初年度の賞与は満額支給ですか、在籍月数按分でしょうか」

5番目は見落とされがちです。年度の途中で入社すると初年度の賞与が按分になる会社は珍しくなく、1年目だけ提示額に届かないことがあります。これは条件が悪いという話ではなく、事前に知っていれば入社時期の相談材料になる、という話です。

聞いても答えが返ってこないもの

  • 他の候補者への提示額:答えられません
  • 等級レンジの上限・下限の金額:社内非公開の会社が多く、開示しない前提で運用されています
  • 将来の昇給率の約束:制度上の標準昇給は答えられますが、個人への約束はできません

これらを繰り返し尋ねると、条件面だけを見ている候補者だと受け取られます。聞くべきは、すでに決まっていて開示できる情報のほうです。

内訳がわかってから、交渉するかを決める

内訳を分解すると、そもそも交渉が必要かどうかがはっきりします。基本給が現職より高くて賞与想定が控えめなら、提示額が同じでも実質は上がっていることがあります。逆に固定残業代で嵩上げされているなら、金額ではなく基本給の比率を相談する余地があります。

金額を動かす交渉の進め方は年収交渉・給与交渉はエージェント経由が有利な理由に書きました。オファーが出たあとで現職から引き止めを受けた場合の判断は退職の引き止めは会社側でどう決まるのか、面談の前段でエージェントに何を伝えておくかは転職エージェントの初回面談で必ず伝えるべき3つのことにまとめています。

よくある質問

内訳を聞くと、条件にうるさい候補者だと思われませんか

思われません。内訳の説明は人事が用意している標準的な情報で、聞かれること自体が想定されています。印象に影響するのは、聞き方ではなく、答えられない情報を繰り返し求めた場合です。

オファーレターに内訳が書かれていない場合はどうすればいいですか

口頭でも構わないので確認しておくことをおすすめします。労働条件通知書には基本給と諸手当の額を記載する必要があるため、入社手続きの段階では必ず開示されます。前倒しで聞いているだけ、という位置づけです。

固定残業代がある会社は避けたほうがいいですか

制度自体の良し悪しではなく、比率と超過分の扱いで判断するほうが実態に合います。時間数が過大でないか、超過分が別途支給されるか、賞与の算定基礎がどうなっているか。この3点が確認できれば、不利になる条件かどうかは判断できます。

まとめ

  • 提示年収は基本給・固定残業代・賞与・手当の合計。同じ金額でも組み方で実態が変わる
  • 基本給の比率が低いと、賞与・退職金・残業単価が連動して小さくなる
  • 会社側で動かせるのは等級レンジ内の位置。等級そのものはオファー後には変わらない
  • 面談で聞くのは、内訳・賞与の算定と実績・固定残業の時間数・手当の要件・初年度賞与の扱いの5つ
  • 他候補者の提示額やレンジの絶対値は開示されない。聞くべきはすでに決まっている情報

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