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転職エージェントを2社3社と使っていると、届く求人の中身がはっきり違うことに気づきます。片方からは事業会社の人事ポジションが来るのに、もう片方からはコンサルとSIerばかり届く、といった差です。
これを担当者の力量差として説明する記事は多くあります。ただ、採用側で求人を出していた立場から見ると、差がつく理由の半分は、応募者が誰かに会う前の段階で決まっています。どの会社に、どの順番で求人を出すかを、採用側が先に決めているからです。
同じポジションが、すべてのエージェントに出ているわけではない
人事のポジションを1つ埋めるとき、採用側が最初にやるのは「どこに出すか」を選ぶことです。全社に一斉に出すことは、まずありません。
理由は単純で、応募が増えるほど選考の手間が増えるからです。人事の中途採用は年に数件という会社が多く、書類を読むのも面接に出るのも現任の人事メンバーです。母集団を増やすことより、読める量に収めることが優先されます。
その結果、同じポジションでも出ている場所と出ていない場所ができます。登録しているエージェントにそのポジションが来ていなければ、担当者がどれだけ優秀でも紹介は発生しません。
出し先を決めるとき、採用側が見ているもの
| 見ているもの | 中身 |
|---|---|
| 過去の決定実績 | そのエージェント経由で入社した人がいるか。いれば最初に声をかける |
| 手数料率 | 理論年収に対する割合。会社ごとに差があり、基本契約で決まっている |
| 返金規定 | 早期退職したときにいくら戻るか。ここが弱いと優先度が下がる |
| 領域の専門性 | 人事・HRテック領域の求人を扱った実績があるか |
| 窓口の手間 | 1社増えるごとに説明と質問対応が増える。採用担当が1人なら2〜3社が限界 |
このうち応募者から見えるのは、4つ目の専門性だけです。残りは契約と社内の事情で決まっていて、応募者の経歴とは関係がありません。
求人は、時期によって出る場所が変わる
出し先は最初に決めて終わりではありません。埋まらなければ段階的に広がります。
最初は1〜2社に絞る
付き合いが長く、過去に決定実績のある会社から声をかけます。ここで決まれば、その求人は他社に出ないまま終わります。外から見ると、そのポジションは存在しなかったことになります。
埋まらなければ広げる
書類が集まらない、または面接まで進んだ人が見送りになった場合、出し先を増やします。この段階で初めて、領域特化やハイクラス向けの会社に話が行くことがあります。
最後は条件か手段を変える
想定年収レンジを上げるか、必須要件を緩めるか、ダイレクトリクルーティングに切り替えます。ここまで来た求人は、最初に出たときとは中身が変わっています。
つまり同じ会社の同じポジションでも、いつ登録したかで届くかどうかが変わります。3か月前なら来なかった求人が、いまなら来ることがあります。
「紹介される求人の質が低い」の中身は、2つに分かれる
質が低いと感じるとき、中身はだいたい次のどちらかです。
ひとつはずれている。人事システムの経験で登録したのに、開発寄りのポジションばかり届くようなケースです。これは求人票の側に情報が足りず、絞り込みができていないことが原因のことが多くあります。人事システムの求人票で何が落ちるかは、求人票の一行が社内では4つに分かれている話にまとめました。
もうひとつは来ない。件数そのものが少ない状態です。こちらは担当者ではなく、そのエージェントに求人が流れていないだけの可能性があります。前者は聞き方を変えれば動きますが、後者は窓口を足さないと動きません。
エンワールド・ジャパンに登録して、社外の条件と並べて比較する
領域を絞って求人を扱っている窓口を1つ持っておくと、この切り分けがしやすくなります。先に登録した側で届く量を見てから足せば、増えた分がどちらから来たものかが分かり、担当者の問題なのか求人の流れ方の問題なのかを分けて考えられます。
登録は、同時ではなく時期をずらす
よく言われるのは「複数社に登録しましょう」です。ただし同時に全部へ登録すると、同じ求人を複数のエージェントから提案される状態になります。どこから応募するかを自分で選べず、先に同意した経路で確定してしまいます。
採用側に同じ人の応募が2社から届いた場合、処理はいくつかに分かれますが、おおむね後から来たほうが不利になります。応募者側には「急に選考が止まった」という形で出ます。詳しくは2社から同じ企業に応募が届いたとき採用側で起きることに書きました。
順番を分けるほうが扱いやすくなります。まず1〜2社で市況と自分の評価を確認し、届く求人の傾向を見てから、足りない方向を補う形で追加する流れです。
人事の求人が動く時期は、だいたい決まっている
登録の時期を考えるとき、もうひとつ材料があります。人事の欠員は、異動の発令後に顕在化することが多いという点です。
4月と10月に組織変更と異動があり、そこで人が抜けた部署が補充を起票します。起票から募集要項が固まってエージェントに出るまでには数週間かかるので、求人が実際に動くのは、異動そのものより少し後になります。
実務では、期の切れ目に合わせて「この人が抜けるから補充を」という起票が集中します。人事部門の場合、給与計算や社会保険の年次イベントを抱えているため、繁忙期を外して着任させたいという事情も重なります。結果として、募集開始と着任希望日のあいだが長い求人が出やすくなります。
また、年度予算で採用枠が決まっている会社では、期の前半に枠を使い切ると後半の動きが鈍ります。逆に期末が近づいて枠が余っているときは、必須要件が緩むことがあります。
これらは応募者側から確認できないので、狙って当てにいくものではありません。ただ「いま来ていない」が自分の評価ではなく時期の問題であることは、実際によくあります。
もうひとつ、社名を伏せた非公開求人として出ているケースもあります。現任者がまだ在籍している補充や、組織変更を公表する前の募集がこれにあたります。この形だと応募者は会社名が分からないまま判断することになり、同じ求人だと気づかないまま2社から応募してしまう原因にもなります。
社名が伏せられている求人ほど、応募に同意する前に業種と従業員規模、それから募集の背景が増員なのか欠員補充なのかを聞いておくと、重複の判断材料になります。エージェント側も、そこまでは答えられることが多い範囲です。
まとめ
エージェントによって届く求人が違うのは、採用側が出し先と順番を先に決めているからです。過去の決定実績、手数料率、返金規定、領域の専門性、窓口の手間。この5つで決まり、応募者の経歴は関係しません。
求人は埋まらなければ段階的に出し先が広がるので、登録した時期によって届くかどうかも変わります。「質が低い」と感じたときは、ずれているのか来ていないのかを先に分けてください。前者は聞き方の問題で、後者は窓口の問題です。
よくある質問
Q. 何社に登録するのが適切ですか
決まった数はありません。窓口を増やすほど連絡と面談の対応時間が増えるので、対応できる範囲で決めるほうが現実的です。まず1〜2社で届く求人の傾向を見てから足す進め方であれば、社数は結果として決まります。
Q. 大手と領域特化では、どちらに先に登録すべきですか
順番に正解はありませんが、届く求人の傾向を先に知りたいなら、扱っている領域がはっきりしている窓口のほうが判断材料になります。大手は件数が多いぶん、傾向がつかみにくいことがあります。
Q. 同じ求人が2社から届いたら、どちらを選ぶべきですか
応募に同意する前であれば、自分で選べます。基準は、求人票に書かれていない情報をどちらが確認してくれるかです。同意したあとは経路が確定するので、動かせる余地はほとんどありません。
Q. 手数料率が高いエージェント経由だと、選考で不利になりますか
手数料率を理由に書類を落とす運用は、私が見てきた範囲ではありませんでした。ただし同じ人が複数経路から来た場合に、どちらを有効として扱うかの判断材料にはなります。
Q. しばらく紹介が来ないときは、登録し直したほうがいいですか
登録し直しても、そのエージェントに求人が来ていなければ結果は変わりません。担当者に、いま扱っている人事領域の求人件数を聞くほうが早く分かります。件数自体が少なければ、窓口を足す判断になります。


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