人事システムの導入プロジェクトが本番稼働を迎えた翌週、多くの現場で起きるのは達成感ではなく、居場所が急に薄くなる感覚です。
※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
僕はSIerで作る側、コンサルで提案する側、事業会社で発注する側を経験して、いくつかの人事システム導入を通しました。稼働のあとに何が起きるかは、驚くほど似ています。
この記事は、転職市場でどう評価されるかの話ではありません。稼働したあと、社内で何が起きるのかを先に整理します。評価のされ方や語り方はPMO・PM経験の評価の記事にまとめています。
稼働がゴールに設定されていると、翌週に枠が消える
プロジェクト計画のゴールが「本番稼働」になっている場合、稼働日を過ぎた時点で、要員計画上のプロジェクト枠は役目を終えます。
専任で入っていた人は次のアサインを待つことになり、兼務で入っていた人は元の部署の比率に戻ります。ここまでは計画どおりです。問題は、戻る先が計画どおりではないことのほうにあります。
戻る先の仕事は、その間に別の人が回している
導入プロジェクトは短くて半年、人事システムなら1年から2年かかります。そのあいだ、元の担当業務は誰かに割り振られて回っています。
戻るときに起きるのは「元のポジションに戻る」ではなく「もう一度どこかに割り当てられる」です。担当していた領域を別の人が持ったままなら、戻った先での役割は以前と同じにはなりません。
抜けていた期間が長いほど、戻り先は狭くなる
1年抜けているあいだに、制度改正も組織変更も進みます。戻った時点で、担当していた領域の前提が変わっていることは珍しくありません。プロジェクトの側にいた期間が長いほど、戻り先で即戦力として扱われる範囲は狭くなります。
プロジェクトの経験は、社内の評価表に載る枠がない
ここが構造的な部分です。
多くの会社の評価制度は、担当業務の遂行度を軸に作られています。プロジェクトは「特命」や「兼務」として扱われることが多く、評価表の項目に対応する枠がありません。
さらに、評価者が元の部署の上司のままというケースがあります。その場合、プロジェクトでの働きぶりを直接見ていない人が評価をつけることになります。プロジェクト側の責任者が評価に関与する仕組みがあるかどうかは、会社によって分かれます。
それは怠慢ではなく、制度がその形をしていないだけ
上司が正当に評価しようとしても、評価表に該当する項目がなければ点数の付けようがありません。ここは個人の姿勢の問題ではなく、制度の設計の問題です。だからこそ、次の期の制度が変わらないかぎり同じことが起きます。
社内で説明しにくいものほど、外では説明しやすい
社内には「担当業務の遂行」という軸しかないので、プロジェクトでやったことは言葉にしづらくなります。要件定義でどこを削ったか、移行でどのデータを捨てる判断をしたか、稼働判定で何を根拠にゴーを出したか。これらは評価表のどの行にも入りません。
社外では、この順番が逆になります。発注側で要件定義から稼働後まで通した人は、そもそも母数が少ないためです。作る側の経験者は多く、提案する側の経験者もいますが、発注側で要件定義から稼働後まで残った人は、作る側や提案する側に比べて母数がはっきり小さくなります。
社内SEから事業会社のIT部門ではなく、エンジニアとしての専門性で年収を上げたい場合は、ITエンジニア専門のテックゴーで人事システム・情シス領域の求人を見る(登録すると担当者から連絡が入る)も見ておくと選択肢が広がります。模擬面接の回数に制限がないので、社内調整が中心で面接慣れしていない情シスの人には使いやすいはずです。
すぐ動くかどうかは別として、自分の経験が外でどの職種の言葉になるのかを知っておくと、社内で次のアサインを相談するときの材料にもなります。次の節は、その相談の前に見ておける場所の話です。
稼働後3〜6か月に、いちばん重い仕事が残っている
人事システムは、稼働しただけでは本当の問題が出ません。最初の給与計算、最初の評価サイクル、最初の年末調整を通してはじめて、設計の穴が表に出ます。
やっかいなのは、それが出てくる時期には体制がすでに縮んでいることです。社内では「あのプロジェクトは終わった」と認識されているのに、実務の側では終わっていない。この時期に残された人が、最も負荷が高くなります。
この時期に抜けると、知っている人がいなくなる
逆の見方もできます。設計の経緯を知っている人が自分しかいない状態は、社内での必要性が最も高い時期でもあります。動くタイミングを考えるなら、この期間が終わったあとのほうが、引き継ぎで揉めにくくなります。
決める前に、自分で確認できる3か所
稼働後に自分がどう扱われるのかは、次の3か所を見ると、感覚ではなく事実で分かります。
- 次期の要員計画に自分の枠があるか。運用フェーズの体制が何人で組まれているか、その中に自分の名前があるか
- 運用フェーズの体制図が作られているか。作られていない場合、稼働後の要員は「元に戻る」前提で計画されています
- プロジェクトの成果が誰の評価表に反映されるか。プロジェクト責任者が評価に関与する仕組みがあるかどうか
3つとも、人事や情報システム部門の要員計画の資料に書かれています。稼働の3か月前には次期の体制の検討が始まっていることが多いので、そのタイミングで見えていないなら、枠は用意されていない可能性が高くなります。
まとめ
- ゴールが本番稼働に設定されていると、稼働の翌週にはプロジェクトの枠が消える
- 戻る先の担当業務は、抜けているあいだに別の人が回している
- プロジェクト経験は評価表の項目に対応しないことが多い。制度の設計の問題であって、上司の姿勢の問題ではない
- 社内で説明しにくい経験ほど、社外では母数が少なく説明しやすい
- 設計の穴が出るのは稼働後3〜6か月。体制が縮んだあとに来る
- 次期の要員計画、運用フェーズの体制図、評価の反映先の3か所は、自分で確認できる
よくある質問
Q. プロジェクトが終わったら、元の部署に戻れますか
戻る先の担当業務は、抜けているあいだに別の人が引き継いでいることがほとんどです。制度上は復帰でも、実際には新しい割り当てになります。次期の要員計画に自分の枠があるかどうかが、いちばん確実な手がかりになります。
Q. プロジェクトの経験は社内評価に反映されますか
会社によって分かれます。評価制度が担当業務の遂行度を軸にしている場合、プロジェクトは特命や兼務の扱いになり、評価表の項目に対応する枠がないことがあります。プロジェクト責任者が評価に関与する仕組みがあるかを見ると判断できます。
Q. 稼働したら仕事は落ち着きますか
人事システムの場合、最初の給与計算、最初の評価サイクル、最初の年末調整を通してから設計の穴が出ます。その時期には体制が縮んでいることが多く、残った人の負荷は稼働前より高くなる場面があります。
Q. 転職を考えるなら、いつが動きやすいですか
稼働後3〜6か月は、設計の経緯を知っている人が限られる時期です。引き継ぎの観点では、この期間が終わったあとのほうが揉めにくくなります。ただし社内での必要性が最も高い時期でもあるため、引き止めは強くなりやすくなります。
Q. 発注側の経験は、作る側の経験と比べて評価されますか
母数が違います。作る側や提案する側の経験者に比べ、発注側で要件定義から稼働後まで通した人は、それに比べて母数がはっきり小さくなります。社内では言葉にしにくい経験が、社外では希少になるという逆転が起きます。


コメント