大企業人事のキャリアパスの実態|市場価値が上がる3つの越境ルート

転職ノウハウ

大企業の人事は「安定しているが潰しが利かない」と言われます。半分は当たっていますが、それは配属された領域を動かなかった場合の話です。同じ人事部にいても、制度企画だけを続けた人と、システムや労務まで越境した人では、転職市場での評価がまったく違います。

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僕は事業会社の人事部門で制度・システム統合を担当し、その後IT部門へ移りました。採用する側としてエージェントと付き合った経験もあります。この記事では、大企業人事の仕事が実際どう分かれていて、どのキャリアパスが市場価値につながるのかを書きます。

大企業人事の仕事は、実は4つに分かれている

「人事」とひとくくりにされますが、大企業では機能ごとに担当が分かれているのが普通です。この違いを理解していないと、キャリアの設計を間違えます。

領域 主な仕事 市場での評価
採用 新卒・中途採用、母集団形成、面接設計 需要は多いが競合も多い
制度企画 等級・評価・報酬制度の設計と改定 設計経験があれば高い
労務 就業規則、労使交渉、勤怠管理、安全衛生 専門性が高く、代替が効きにくい
HRIS・人事システム システム導入・運用、データ整備 人材が少なく、最も評価されやすい

大企業では、このどれかに数年ずつ配属されるのが一般的です。問題は、ローテーションが「浅く広く」で終わると、どれも語れない状態になることです。

「調整だけしてきた人」が一番厳しい

採用する側にいて感じたのは、大企業人事の職務経歴書で最も多いのが「関係部署と調整し、制度改定を推進しました」という書き方だということです。

これでは何をしたのかが分かりません。調整は手段であって成果ではないからです。面接で「その制度は誰の何を解決するために変えたのですか」と聞いて答えられないと、判断ができません。

逆に評価されるのは、意思決定に関わった経験を語れる人です。規模の大小ではなく、自分がどの判断をしたかを説明できるかどうかで見え方が変わります。

市場価値が上がる3つのキャリアパス

1. 人事 × IT(HRIS・人事システム)

最も人材が不足している領域です。人事制度を理解したうえでシステムを設計できる人は、社内で育てるのが難しく、中途採用で取りに行くしかありません。

人事システムの刷新は多くの企業で同時期に走っており、発注側の経験者は業界を変えても通用します。詳しくは人事システム人材の市場価値が高い理由で書いています。

2. 人事 × 事業(HRBP)

事業部門に入り込んで、組織課題を人事の手法で解決する役割です。大企業では本社人事と事業部人事が分かれていることが多く、両方を経験していると強い。

ただしHRBPは会社によって定義がばらばらです。実態が事業部の労務担当というケースもあるので、転職時は職務内容を具体的に見ておかないと、入ってから食い違います。

3. 人事 × 労務の専門性

労働法の改正が続いており、労務の専門性は需要が安定しています。地味に見えますが、労使交渉を実際に経験した人は市場に多くありません。制度企画より代替が効きにくい領域です。

大企業人事から転職するときの現実

年収は下がることがある

大企業の給与テーブルは、職務の難易度より在籍年数と等級で決まる部分が大きい。そのため、同じ仕事をより高く評価してくれる会社に移らない限り、転職で年収が下がることは普通にあります。

下がっても取り返せるのは、経験の希少性が上がる転職です。判断の基準としては、次の会社で「今より狭くて深い経験ができるか」を見てください。

「大企業の看板」は思ったほど効かない

知名度のある会社にいると、それだけで評価されると思いがちですが、実際に見られるのはその会社で何を任されていたかです。むしろ「大企業だから分業されていて、全体を見ていないのでは」と疑われることもあります。

職務経歴書では、担当範囲と自分の裁量を明確に書いてください。詳しくは人事から見た職務経歴書の書き方にまとめています。

いつ動くべきか

大企業人事で動きどきなのは、次の異動で領域が変わるタイミングの前後です。

今の領域で語れる経験が溜まっている状態なら、その専門性を評価してくれる会社に移る選択肢があります。一方、異動して新しい領域に入ったばかりなら、そこで2〜3年経験を積んでからのほうが選択肢は広がります。

ただし、人事システムやHRテック領域に興味があるなら、早めに市場を見ておくことをおすすめします。この領域は今が需要のピークに近く、数年後には経験者が増えて希少性が下がる可能性があるからです。

人事×ITの求人は一般的な転職エージェントでは扱いが薄く、IT側の事情に詳しいエージェントのほうが実態を教えてくれます。ギークリーはIT・Web業界に特化しているため、HRIS系のポジションでも技術的な体制や開発の進め方まで踏み込んで確認できます。

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よくある質問

Q. 人事から他職種への転職は可能ですか?

可能ですが、隣接領域に限られます。現実的なのは、人事システム、組織コンサルティング、人材業界あたりです。まったく異なる職種への転職は、年齢が上がるほど難しくなります。

Q. 人事の経験は中小企業でも活きますか?

活きますが、求められるものが変わります。大企業では分業されていた領域を1人で見ることになるため、深さより広さが問われます。制度設計だけを深くやってきた人は、労務や採用の実務も求められます。

Q. 社労士の資格は転職に有利ですか?

労務領域では評価されますが、資格そのものより実務経験が優先されます。資格を取ってから動くより、今の会社で労務実務に関わる機会を作るほうが早いことが多いです。

大企業の人事キャリアを社外で評価してもらうには、社内の実績を翻訳する作業が要ります。その構造は大手JTCからの転職はなぜ難しいのかで解説しました。

社内での異動ルートとして公募に応募し、落選した場合の切り分けは社内公募に落ちた理由は4つにまとめています。

まとめ

大企業人事のキャリアは、配属された領域にとどまるか、越境するかで市場価値が分かれます。特に人事×ITは人材が不足しており、今のところ最も評価されやすい掛け算です。

越境キャリアの作り方については人事からITへ、ITから人事へで詳しく書いています。

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