複数の転職エージェントに登録していると、気づかないうちに同じ企業へ2件の応募が届くことがあります。求人票に社名が出ていない求人では、応募者の側からは見分けがつきません。
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採用側で応募管理システムを見てきた立場から書くと、重複は担当者が履歴書を読み比べて気づくのではなく、システムの照合で先に検知されます。そして多くの場合、後から届いた側の応募が止まります。ここでは企業側で実際に何が処理され、それが応募者にどんな症状として現れるかを整理します。
重複は、担当者が気づく前に照合で見つかる
応募管理システムには、同一人物の応募を見つけるための照合機能が備わっているものが多くあります。照合に使われるのは、氏名と生年月日の組み合わせ、メールアドレス、電話番号です。エージェント経由の応募も、企業のシステムに取り込まれた時点では、自社サイトからの応募と同じ1件の応募データとして扱われるのが一般的です。
照合が一致すると、多くの製品では「既存の候補者がいます」という警告が表示されるか、既存のレコードに自動で紐づけられます。担当者が2通の職務経歴書を読み比べて同一人物だと気づくのではなく、開く前の画面上で重複が示されている、というのが実際の順序です。
ただし、照合をすり抜けることもあります。すり抜けた場合は、面接の日程を調整する段階や、選考結果を各社へ連絡する段階で発覚します。発覚が遅いほど、関係する人数が増えます。
| 照合に使われる項目 | すり抜けが起きる条件 |
|---|---|
| 氏名と生年月日 | 旧姓と現姓を使い分けている |
| メールアドレス | エージェントごとに別のアドレスを登録している |
| 電話番号 | 片方に自宅、片方に携帯を登録している |
企業側が取る処理は、おおむね3つに分かれる
重複が判明したときの扱いは、採用担当者の裁量で決まる部分が小さい領域です。人材紹介の契約書に、どちらの紹介を有効とするかの取り決めが書かれていることが多いためです。実際に取られる処理は、次の3つに整理できます。
| 処理 | 企業側で起きること | 応募者から見えるもの |
|---|---|---|
| 先に届いた側を有効にする | 先着の1件を生かし、後から届いた紹介を無効として扱う | 後から応募したエージェントから見送りの連絡が来る |
| 自社応募を優先する | 直接応募がすでにある場合は、そちらを生かす | エージェントから見送りの連絡が来る |
| 両方を保留して確認する | どちらが先かを確認するまで選考を進めない | 連絡が来ない期間が続く |
3つ目が、応募者にとっては最も分かりにくい形になります。選考が落ちたわけでも進んだわけでもない状態で、企業とエージェント2社の間の確認が終わるのを待つことになるためです。この確認は数日で終わることもあれば、担当者の稼働状況によって2週間ほどかかることもあります。
応募者側には、こういう症状として出る
重複が理由で選考が止まっているとき、企業もエージェントも「重複が理由です」とは明示しないことがあります。契約上の処理を応募者に説明する義務がないうえ、説明すると別のエージェントの存在に触れることになるためです。結果として、応募者の側には次のような形で現れます。
- 書類選考の結果は出ているはずの時期なのに、面接の日程調整だけが進まない
- 片方のエージェントから、理由の説明がないまま見送りの連絡が来る
- 2社とも連絡が途絶える
- 「他社経由での応募履歴が確認されました」とだけ伝えられる
いずれの場合も、応募者の経歴が評価された結果ではありません。選考が始まる前の段階で、応募の受け口がひとつに絞られただけです。
登録するエージェントを増やすほど、どの会社へ応募が出ているかは自分の手元でしか把握できなくなります。登録先を増やす前に、その会社が扱う求人の領域を見ておくと、応募先の重なりは減らせます。
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なぜ「後から来たほう」が切られるのか
企業が同じ人を2社経由で採用してしまうと、紹介手数料の支払い先が二重に発生する可能性があります。年収の3割前後とされることが多く、金額としては小さくありません。そのため人材紹介の契約書には、先に紹介した側を有効とする条項や、自社応募が先にある場合は紹介を成立させない条項が置かれているのが通例です。
つまり「後から来たほう」が切られるのは、後から来たエージェントの印象が悪いからではなく、契約でそう決まっているからです。担当者に相談しても、順番が動くことはまずありません。
この手数料が採用予算のどこから出ているのかは、転職エージェントを使わなければ年収は上がるのか|紹介手数料が浮いても提示額が動かない理由で扱っています。
重複が起きやすいのは、社名が伏せられている求人
非公開求人では、応募の同意を取る前の段階で社名が出ていないことがあります。「大手メーカー、東京、年収800万円以上」という情報だけでは、2社から紹介された求人が同じ会社なのかどうかを応募者が判断する材料がありません。
同じ求人が複数のエージェントに出ているのは珍しいことではありません。むしろ1社にしか出していない求人のほうが少数です。採用側からすると、母集団を確保するために複数社へ同じ求人票を配るほうが自然だからです。
社名は、応募の同意を求める段階で開示されるのが一般的です。ただし電話やオンライン面談の場で口頭で一度伝えられるだけだと、応募者の手元には記録が残りません。あとから「あのとき聞いた会社と同じだったのか」を確かめる方法がなくなります。
応募に同意する前に、自分の側に残せるもの
重複を防ぐ手段は、企業へ推薦が出たあとにはほとんど残りません。同意の前に自分の側で持てる記録が、実質的な防御になります。
- 応募に同意した企業名と日付を、自分のメモに残しておくと、次のエージェントから同じ社名が出たときに突き合わせができます
- 企業名を口頭で伝えられた場合、メールでも送ってもらう形にしておくと記録が残ります
- 登録先をすべて同じメールアドレスと同じ氏名表記で統一しておくと、企業側の照合が早い段階で働きます
3つ目は直感に反するかもしれません。照合をすり抜けたほうが両方の選考が進むように見えますが、実際には発覚が遅れるほど、選考が進んだあとで止まることになります。早い段階で分かるほうが、片方を取り下げて別の求人に振り替える余地が残ります。
なお、選考が止まる原因は重複だけではありません。企業側の事情で求人そのものが動かなくなっている場合もあり、そのときは連絡の途絶え方が変わります。見分け方は転職エージェントからの紹介が急に止まる理由|求人が「開いたまま動かない」4つの期間で整理しています。
すでに重複してしまったとき、動かせる余地はどこにあるか
取り下げの調整ができるのは、企業へ推薦が出る前までです。推薦が出たあとは、企業側の受付日が記録として残るため、応募者の意思で順番を入れ替えることはできません。
2社とも連絡が途絶えた場合、応募者の側から動かせる範囲は限られます。企業へ直接問い合わせる方法は、エージェント経由の応募者としては契約上の立場が曖昧になるため、状況を悪くすることがあります。現実的には、先に応募が出ていたほうのエージェントに状況を確認するのが、いちばん筋が通る経路になります。
まとめ
- 重複は担当者の目視ではなく、氏名・生年月日・メールアドレス・電話番号の照合で検知される
- 企業側の処理は、先着優先・自社応募優先・保留のいずれかで、担当者の裁量は小さい
- 応募者には「日程が進まない」「理由のない見送り」「連絡が途絶える」という形で現れる
- 防げるのは応募に同意する前までで、同意した企業名の記録が実質的な防御になる
よくある質問
Q. 同じ企業に2社から応募すると、選考で不利になりますか
経歴の評価が下がるというより、選考が始まる前に片方の応募が無効になる形が多くみられます。ただし、どちらが先かを確認するやり取りの分だけ、日程が後ろにずれることはあります。
Q. 重複していることは、自分からエージェントに伝えたほうがいいですか
応募が出る前であれば、伝えることで取り下げの調整ができます。伝えないまま企業側で発覚した場合は、どちらを残すかを選ぶ余地がない状態で片方が無効になります。
Q. 社名が非公開の求人でも、応募前に企業名は分かりますか
応募の同意を求める段階で開示されるのが一般的です。開示されないまま同意を求められた場合、応募者の側で重複を避ける判断はできません。
Q. 直接応募とエージェント経由が重なったら、どちらが優先されますか
自社応募を優先する運用の企業が多くみられますが、契約の内容によって異なります。企業ごとに違うため、一律には決まりません。
Q. エージェントは何社まで登録するのが適切ですか
社数の上限より、扱う求人の領域が重なっているかどうかで決まります。同じ領域の3社より、領域の違う2社のほうが重複は起きにくくなります。


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