※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
「10月から、いまの部は無くなる」。9月に入ってから、部門長や上司の口でこう聞かされることがあります。新しい組織図だけが先に回ってきて、自分の行き先については何も言われない、という状態です。
この時点で配置が伝わらないのは、隠されているからとは限りません。組織改編と人事異動は別の工程で決まっていて、器を先に確定させてから人を埋める順番になっているためです。順番を知っていると、いま何が決まっていて何が決まっていないのかを切り分けられます。
ここでは、10月1日付の改編で配置がどの順番で決まるのか、本人の希望が反映されうる期間はどこか、そして改編で実際に変わるものと変わらないものを、制度を運用する側から整理します。
組織改編と人事異動は、別々に決まっている
組織改編は「組織をどう分けるか」の決定です。部や課を新設し、統合し、廃止する。多くの会社でこれは組織規程の改正にあたり、役員会や経営会議の決裁事項になっています。
人事異動は「誰をどこに置くか」の決定です。人事部門と各部門長が原案を作り、階層に応じて決裁されます。
この二つは同じ日に発表されることが多いので、ひとつの決定に見えます。ただし社内で固まる時期は違います。組織図が確定してから、その空欄を埋める作業が始まります。「部が無くなる」だけが先に伝わり、行き先が後になるのは、この順序の結果です。
配置が決まる順番は、おおむね共通している
呼び方は会社ごとに違いますが、工程の並びはあまり変わりません。
1. 組織図の確定
新しい部・課の名称、担当領域、レポートラインが決まります。10月1日付の改編なら9月上旬までに固まっている会社が多く、この段階で廃止される部署が確定します。
2. 管理職ポストの配置
部長・課長級を先に埋めます。管理職は人数が少ないうえ、一人動かすと後任の玉突きが広い範囲に及ぶため、ここが決まらないと下の階層を動かせません。
3. 一般社員の配置
新しい上司が決まったあとに、その下の要員が割り振られます。廃止される部署の在籍者は、担当していた業務がどの新組織へ移るかに沿って配置されるのが基本です。業務が複数の新組織に分割される場合、ここで初めて個別の判断が入ります。
4. 発令
辞令が出て、人事システム上の所属が切り替わります。ここで確定します。
本人の希望が反映されうるのは、1と3のあいだ
組織図が固まってから一般社員の配置が埋まるまでの間が、希望が入る余地のある唯一の期間です。発令の直前になると玉突きの連鎖が組み上がっているため、一人の希望で全体を組み替えることは現実には難しくなります。
この期間に効きやすいものは3つあります。
- 直近の自己申告・異動希望調査に書いた内容。改編時の配置検討で参照される会社は少なくない
- 現在の上長に伝えてある意向。部門をまたぐ調整は、本人ではなく上長どうしで行われる
- 社内公募。改編で新設された組織が、要員の一部を公募で埋めることがある
社内公募を使う場合、応募したことが現在の上司にいつ伝わるかで動き方が変わります。社内公募は上司にいつ伝わるのかで整理しています。
断れるかどうかは、契約にどう書いてあるかで変わる
就業規則に配置転換の条項があり、勤務地や職種を限定する合意がない場合、会社には配転を命じる権限があるとされています。本人の同意を個別に取り直す必要はない、という前提です。
ただし無制限ではありません。最高裁は1986年の判断で、業務上の必要性がない場合、不当な動機や目的による場合、または通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、配転命令が権利の濫用になるとしています。組織改編に伴う配置転換は、通常この最初の「必要性」を満たすため、争点になるのは残る二つのほうです。
もうひとつ、2024年4月以降に労働契約を結んだり有期契約を更新したりした場合は、労働条件通知書に「就業場所・業務の変更の範囲」が書かれています。ここに書かれた範囲は、その時点で会社が想定していた異動の幅です。改編後の配置がその範囲に収まっているかは、手元の書面で照らし合わせられます。
改編で変わるものと、変わらないもの
| 項目 | 改編で変わるか |
|---|---|
| 雇用契約の相手(会社) | 変わらない |
| 基本給 | 原則として変わらない |
| 役職手当 | 役職が外れれば無くなる |
| 評価者 | 変わる |
| 評価期間の区切り | 期の途中で分断されることがある |
| 就業場所 | 変わることがある |
| 担当業務 | 変わることがある |
雇用契約の相手が変わらない点は、転籍との大きな違いです。同じ「異動」という言葉で語られても、法人格をまたぐかどうかで手続きも同意の要否も変わります。法人が変わる場合の扱いは経営統合で転籍を経験した話で扱っています。
上期の評価が宙に浮きやすい
9月末で組織が消えると、上期の評価を誰が付けるのかが曖昧になりがちです。評価者だった課長が別組織へ移り、新しい上司は本人の上期の働きぶりを見ていない、という状態が起こります。
運用としては、期末時点の評価者、つまり旧組織の上司が上期分を確定させてから引き渡す形が一般的です。ただしこれが徹底されないと、評価システム上の評価者だけが新組織の上司に切り替わり、根拠のない評価が付くことになります。
評価システムを開いて、上期分の評価者が誰になっているかは本人でも確認できる会社が多く、切り替わっていた場合は早い段階で人事に照会したほうが直しやすい部分です。発令後に遡って直すのは手間がかかります。
引き継ぎの期間は、退職より短くなる
改編に伴う異動の引き継ぎは、発令日を挟んで数日から2週間程度しか取られないことがよくあります。同じ会社の中にいるので、あとから聞けるという前提が置かれるためです。
実際には、新しい担当業務の立ち上がりと並行するため、旧業務の質問に応じる余力は想定より小さくなります。改編のたびに、どの資料がどこにあるかが分からなくなる部署が出るのは、この時間配分が原因であることが多い。
改編を機に外を見る場合
発令の前と後では、職務経歴書に書ける内容が変わります。発令前は「予定」でしかありませんが、発令後は所属と担当が事実として書けます。数か月の差ですが、書類の説得力は変わります。
一方で、改編直後に転職活動を始めると、新しい担当業務の実績がまだない期間に選考を受けることになります。システム導入プロジェクトが終わったあと、担当者はどこへ行くのかで書いた話と同じ構造で、区切りをどこで取るかが結果を左右します。
まとめ
- 組織改編と人事異動は別の工程で、組織図が固まってから配置が埋まる
- 配置は管理職から先に決まり、一般社員はそのあとに割り振られる
- 本人の希望が入る余地があるのは、組織図の確定から配置が埋まるまでの間だけ
- 就業規則に配転条項があれば会社に配転を命じる権限があるが、不当な動機や著しい不利益がある場合は権利の濫用になりうる
- 2024年4月以降の契約には「就業場所・業務の変更の範囲」が明示されている
- 雇用契約の相手は変わらない。ここが転籍との違い
- 上期の評価者が新組織の上司に切り替わっていないかは、発令前に確認しておくと直しやすい
よくある質問
Q. 部署がなくなると言われましたが、行き先を教えてもらえません。異常なことですか
組織図の確定と一般社員の配置決定には数週間の間があるため、この時点で示せる行き先がまだ存在しないことはよくあります。管理職の配置が発表されたあとも何も伝わらない場合は、進捗を上長に確認する余地があります。
Q. 組織改編による異動は断れますか
就業規則に配置転換の定めがあり、勤務地や職種の限定合意がない場合、会社には配転を命じる権限があるとされています。ただし不当な動機による場合や、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益がある場合は権利の濫用にあたるとされており、育児や介護の事情は後者の判断で考慮されます。
Q. 部署がなくなると給料は下がりますか
基本給は原則として変わりません。下がる可能性があるのは役職手当のように役職や勤務地に紐づく手当で、役職が外れれば支給されなくなります。賃金そのものを引き下げるには、就業規則の変更や個別の同意など別の手続きが必要です。
Q. 上期の人事評価はどうなりますか
期末時点の評価者、つまり旧組織の上司が確定させてから引き渡す運用が一般的です。ただし評価システム上の評価者だけが先に新組織の上司へ切り替わることがあり、その場合は上期を見ていない人が評価することになります。発令前に評価者設定を確認できる会社は多いです。
Q. 改編で新設された部署に、自分から手を挙げることはできますか
社内公募で要員を募る場合はできます。新設組織は既存部署から人を引き抜く必要があるため、通常より公募枠が出やすい時期です。公募がない場合は、自己申告や上長経由の意向表明が経路になります。


コメント