社内公募は複数のポストに同時応募できるのか|1人1ポストにする会社の事情と、応募資格で先に落ちる4つ

社内公募は複数のポストに同時応募できるのか 転職ノウハウ

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社内公募の一覧が出たとき、条件に合いそうなポストが2つ以上あることがあります。両方に出していいのか、それとも1つに絞るべきなのか。要項を読み直しても、そこだけ書かれていないことが少なくありません。人事に問い合わせれば分かりますが、応募を検討していること自体が伝わりそうで聞きにくい、という声もよく聞きます。

制度を作る側から見ると、同時応募を認めるかどうかは、応募者を試すために置かれた条件ではありません。選ぶ側と調整する側の事情で決まっています。この記事では、その決まり方と、応募の前段にある資格要件について説明します。

同時応募の可否は、要項の書き方で3つに分かれる

公募要領を「応募方法」の節まで読むと、たいてい次のどれかになっています。

ひとつ目は、明示的に1件に限る書き方です。「応募は1回の公募につき1ポストとする」と条文で切ってあるパターンで、この場合は迷う余地がありません。

ふたつ目は、複数を認める書き方です。「複数ポストへの応募を妨げない」あるいは「2件までとする」のように上限を置く形もあります。

そして三つ目が、何も書かれていない場合です。実務ではこれがいちばん多い。制度を作るときに想定していなかったのではなく、条文に書くと例外の扱いまで決めなければならなくなるため、あえて空けてあることがあります。

書かれていない場合、可否は運用側で決まっています。応募フォームが1件しか受け付けない作りになっていれば、実質的に1人1ポストです。フォームが複数受け付ける作りでも、人事の受付担当が2件目を見つけた時点で本人に連絡し、どちらか選ばせる運用になっていることがあります。条文ではなく、フォームの作りと受付の運用が答えになっている。これは要項を何度読んでも出てきません。

「1人1ポスト」にする会社の事情

制限をかける側にも理由があります。応募者を試しているわけではありません。

受入先が横並びで比較される

同じ人が2つのポストに応募すると、2つの受入部署が同じ候補者の書類を同時に見ることになります。片方が「ぜひ来てほしい」と判断し、もう片方も同じ判断をしたとき、部署間で人の取り合いが始まります。

公募は本来、部署が個別に人を選ぶ仕組みです。そこに調整の工程が入ると、選考の結果ではなく部署間の力関係で決まる場面が出てきます。これを避けるために応募を1件に絞る、というのが最も多い理由です。

面接の日程が組めない

社内公募の面接は、就業時間中に、しかも現部署に知られない形で組む必要があります。1件でも調整が難しいところに2件が並ぶと、同じ週に2回、席を外す理由を作らなければならなくなります。

受入先の面接官も通常業務を持っているため、日程の候補は限られます。2件が別々に日程を出してきて、片方を優先すればもう片方が後ろにずれる。結果として、本人の都合がつかないことを理由に落ちる、という本題と関係のない落選が生まれます。

志望度が読めなくなる

選ぶ側は、応募書類から「この人はうちに来たいのか」を読み取ろうとします。同時応募が分かっている場合、志望理由をどう書いても本命がどちらか分かりません。

ただしこれは、応募者の本気度を試しているという話ではありません。受入先が困るのは、合格を出したあとに辞退される確率を見積もれないことです。ポストを埋める前提で来期の要員計画を組んでいる場合、辞退が1件出るだけで枠が空いたまま半年が過ぎます。決断が慎重になるのはそのためで、志望度そのものを評価しているわけではありません。

複数応募ができる会社で、実際に起きること

認めている会社では、本人が意識しなくても人事が裏で調整しています。

典型的なのは、両方の選考が進んだ段階で人事が間に入り、進み方の速い側に寄せる形です。受入先には「他部署の選考も進行中」とだけ伝わり、どこかまでは伝えません。本人には最終面接の直前に「どちらを優先するか」を確認する連絡が来ます。

もうひとつは、日程を人事が一本化する形です。2つの受入先の面接を同じ日にまとめ、本人が席を外す回数を減らす。この運用がある会社は、複数応募を制度として本気で回している会社です。

逆に、調整の仕組みが何もないまま複数応募だけ認めている会社では、両方が並行して最後まで進みます。合格が2つ出て、そこから初めて調整が始まる。この形はいちばん時間がかかり、待たされるのは本人です。

社内で動く道が思ったより細いと分かった場合、社外の求人を並べて比べておくと、社内公募の条件が相対的にどのくらいなのかが見えます。人事や管理部門の専門ポストであれば、同じ領域を扱うエンワールド・ジャパンのような専門特化型のエージェントに登録しておくと、社内の1ポストと社外の複数ポストを同じ物差しで見られるようになります。

ここまでは「何件出せるか」の話でした。ただし実務では、件数の前の段階で受け付けられないことのほうが多くあります。

その前に、応募資格そのもので受け付けられないことがある

公募要領の冒頭には、たいてい応募資格の節があります。ここは読み飛ばされやすいのですが、選考ではなく受付の段階で機械的に効きます。

勤続年数

入社から一定年数を経ていることを条件にする形です。新卒入社の場合は3年、中途入社の場合は1年から2年に置く例が多く見られます。

趣旨は育成側にあります。配属先が採用と育成にかけた費用を、最低限は回収できる期間を確保する、という考え方です。中途入社の年数が新卒より短く設定されているのは、育成の前提が違うからです。

現在の部署での在籍期間

勤続年数とは別に、現部署に来てから何年かを条件にする会社があります。社歴が長くても、直前に異動していれば応募できないことになります。

この条件はいちばん見落とされます。勤続10年だから当然応募できると思って要項を読んだら、現部署に来て8か月で条件は1年だった、というケースは珍しくありません。

等級・グレードの範囲

ポストごとに「対象等級」が書かれている場合、その範囲外からは応募できません。上に外れているときは受け付けられ、下に外れているときは受け付けられない、という非対称な運用をしている会社もあります。

等級が1つ下でも応募できるかどうかは、要項ではなく受入先の判断に委ねられていることが多い部分です。

直近の評価

直近の人事評価が一定以上であることを条件にする形です。明示している会社と、明示せず受入先に評価履歴を渡すだけの会社があります。

明示していない場合でも、評価が渡っていれば実質的な条件として働きます。条件として書かれていないことと、見られていないことは別です。

要項に書かれていないのに、実質的に止まる場所

資格を満たしていても、応募が先に進まないことがあります。多くは次の3か所です。

ひとつは受付段階のチェックです。人事の担当者が資格要件を突き合わせ、外れているものを本人に返します。ここで返された場合、選考には一切載りません。記録上も「応募者」に数えられないことがあります。

ふたつ目は、応募フォームに上司の同意欄がある場合です。同意を要件にしている会社では、その欄が埋まらないかぎり応募が成立しません。同意が要件かどうかは会社によって大きく違い、ここは社内公募は上司にいつ伝わるのかで扱った同意要件の話と直結します。

三つ目は、公募として出ていても実際には候補者が決まっているポストです。制度上は公募の形を取りつつ、受入先がすでに特定の人を想定している場合があります。応募は受け付けられ、選考にも載りますが、結果は動きません。

自社の要項で確認できる3か所

ここまでの内容は、自社の要項を見れば大半が確認できます。見る場所は3か所です。

1か所目は「応募資格」の節です。勤続年数、現部署在籍期間、等級、評価の4つがどう書かれているかを見ます。書かれていない項目は、受入先の判断に委ねられていると読むのが実態に近いところです。

2か所目は「応募方法」の節です。件数の制限がここに書かれます。書かれていない場合は、応募フォームが2件目を受け付けるかどうかが実質的な答えになります。

3か所目は「選考の流れ」の節です。面接の回数と、日程調整を誰がやるかが書かれていれば、複数応募が現実的に回るかどうかの見当がつきます。人事が日程を持つ書き方であれば、複数応募の調整も人事側にあると考えて差し支えありません。

社外のエージェントを複数使う場合も、同じ構図が起きます。同時に登録すると同じ求人が2社から提案され、先に同意した経路で確定してしまいます。エージェントによって求人の出方が違う理由に、登録の順番の考え方を書きました。

まとめ

同時応募の可否は、要項に明示されている会社と、書かれていない会社に分かれます。書かれていない場合は、応募フォームの作りと受付の運用が実質的な答えになっています。

1件に絞る会社の理由は、部署間の取り合いを避けることと、面接の日程が組めないことです。応募者の熱意を測る目的ではありません。

そして件数の前に、応募資格の4つ(勤続年数・現部署在籍期間・等級・直近の評価)で受付段階から進まないことがあります。とくに現部署での在籍期間は見落とされやすく、社歴が長くても直前に異動していれば外れます。

よくある質問

Q. 社内公募に複数のポストへ同時に応募できますか

会社によって異なります。要項の「応募方法」に件数の制限が書かれていればそれに従います。書かれていない場合は、応募フォームが2件目を受け付けるかどうかが実質的な基準になり、受け付けても人事から確認の連絡が来ることがあります。

Q. 同時応募が禁止されているのに2件出すとどうなりますか

受付の段階で人事から連絡が来て、どちらかを選ぶことになるのが一般的です。2件出したこと自体を懲戒的に扱う運用は一般的ではありませんが、2件目の受付を止めるために現部署への確認が入る会社はあります。

Q. 応募資格を満たしていないポストに、それでも応募できますか

受付の段階で返されます。ただし等級が1つ上に外れている場合は受け付ける会社もあり、上と下で扱いが違うことがあります。要項に例外の記載がなければ、受入先に事前に確認できる経路があるかを見ることになります。

Q. 現部署に異動したばかりですが、応募できますか

現部署での在籍期間が応募資格に入っているかによります。入っている場合、1年前後で設定されていることが多く、社歴の長さでは補えません。要項の応募資格の節に該当する記載があるかを見るのが早いところです。

Q. 応募資格で受け付けられなかったことは、記録に残りますか

選考に載る前に返された場合、応募者として数えられないことがあります。その場合、上司や受入先に伝わる経路もありません。ただし人事の受付側には問い合わせの記録が残ります。

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SIerでSAPの人事システム開発に携わったあと、外資系コンサルでSuccessFactorsの導入コンサルタント、大手エネルギー会社の人事として制度統合とシステム統合のPMO・PM、経営統合による転籍を経験。その後、大手企業の情報システム部門で50億円規模の人事システム刷新プロジェクトのPMを務め、現在は大手電機メーカーでスキルベース人材管理の浸透を担当しています。人事として採用や制度を作る側にいた経験と、自身の5回の転職で応募する側にいた経験の両方から、転職市場で実際に何が起きているかを書いています。

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